LESSON COLUMNレッスンコラム
2019.11.16
【疑問】キネティックチェーン(運動連鎖)とは?【筋肉のしなりです】
筋トレについて調べていると「オープンキネティックチェーン」や「クローズドキネティックチェーン」という言葉を目にすることがあります。
一般の方にはあまり馴染みのない言葉ですが、トレーニング中級者から上級者の方、またトレーナーの方は必ず頭に入れておくべき言葉です。
本記事では、「キネティックチェーン」という言葉に焦点を当て、これが運動に及ぼす影響やこれを活かしたトレーニングを解説していきます。
実際にくびれサーキットでも使用するマシンも出てきますので、くびれサーキットにご来店された際には、本記事の内容を意識してトレーニングを行ってみて下さい。
目次
キネティックチェーンとは?
キネティックチェーンは運動連鎖とも呼ばれ、通念は以下の通りです。
もう少し分かりやすく噛み砕くと、様々な筋肉が順番に動くことを言います。
人間の筋肉は約600の筋肉から成っており、歩行の際だけでも200近くの筋肉を動員します。
つまり、人間が動くとき、様々な筋肉が協調し合って動いているのです。
これを最も分かりやすく例えたのが、「ムチのしなり」。
ムチは力が連動することでしなっていくのですが、人間の体もこれと同じように様々な筋肉を連動してムチのようにしなって動いているのです。
様々な筋肉が動員するため、特定の部位だけ鍛えるのはオススメしません。
全身の筋肉をバランスよく鍛え、このキネティックチェーンを意識したトレーニングを行うことで、より効果の出るトレーニングができます。
また、キネティックチェーンには2種類あるのですが、これについては第4章で解説します。
キネティックチェーンの活用法
この章では、キネティックチェーンを活用したトレーニング法をご紹介します。
くびれサーキットにあるマシンはもちろん、自宅でもできるトレーニングもご紹介いたしますので、ぜひチャレンジしてみてください。
マシンを使ったキネティックチェーン活用法
まずはマシンを使ったトレーニング法からです。
レッグプレス
レッグプレスでは、押す際に「かかと側」から押すか「つま先側」から押すかで、力が入る部位が変わります。
つま先側→もも前
大きく分けると上記のようになります。
くびれサーキットでは、お尻を意識していただきたいので、お客様には「かかとでプレートを押しましょう」とお伝えしております。
もちろん、自分の目的に合ったやり方で良いのですが、競技的な目的がない限りは、かかと側から押してお尻を鍛える方が良いでしょう。
もも前を鍛えすぎると、下半身が太って見えますからね。
ロータリートーソ
ロータリートーソでは、捻る際に肩甲骨を「寄せる」か「離す」かで、脇腹への力の伝わり方が変わります。
肩甲骨を寄せる→前鋸筋に力が入りにくい→腹斜筋に効きにくい
この注意点に関しては、【女性向け】「浮き輪肉」と「振り袖肉」撃退に効果的なマシンを紹介の記事でも書いているので、他の注意点も合わせて読んでみて下さい。
美しいくびれを作りたいなら、肩甲骨は「離して」行いましょう。
ラットプルダウン
ラットプルダウンでは、引く際に「小指側」で引くか「親指側」で引くかで、力が入る部位が変わります。
親指側→腕(上腕二頭筋など)
きつくなってくるにつれ、頑張って腕で引こうとして、小指側ではなく親指側に力が入る方がいますが、これでは背中ではなく腕に効いてしまいます。
【トレーナー直伝】ラットプルマシンとローイングマシンの効果的な使い方でも述べていますが、親指でバーを握らず肩がすくまないことを意識する必要があります。
初めは自分に合った重さで、無理をせず小指側で引くことを意識して行いましょう。
自重を使ったキネティックチェーン活用法
次は自重を使ったトレーニング法からです。
全てキネティックチェーンを引き出すことができるメニューですので、より効果を実感していただけると思います。
「内もも〜脇腹〜首」を意識したトレーニング
対角の内ももと脇腹はお互いが恥骨に付着しており、筋肉の走行上お互いが内側に向かって走っています。
そのため、対角の内ももと脇腹を同時に縮めることでより効果を発揮します。
さらに、同じ側の脇腹と首も筋膜でつながっていますので、首も起こしておくことで、より脇腹への刺激が入りやすくなるのです。
これらを踏まえたトレーニングメニューが以下です。
①上の足の膝下にミニボールを挟み、下の膝を伸ばして上の手を上げる。この時、首も起こしておく。
②その状態から体と下の足を同時に上げながら、手で内ももをタッチする。首はセットポイント同様、起こしたまま行う。
「背中〜お尻」を意識したトレーニング
背中の大きな筋肉である「広背筋」とお尻の大きな筋肉である「大臀筋」は筋膜でつながっています。(対角の広背筋と大臀筋)
そのため、対角の背中とお尻を同時に縮めることでより効果を発揮します。
これらを踏まえたトレーニングメニューが以下です。
①壁に手をつき、同じ側の足を後ろに伸ばす。もう片方の足は軽く膝を曲げた状態にし、壁についていない方の手でダンベルを持つ。
②上げた足の位置を保ったまま、脇をしめたままダンベルを引く。
後ろから見た写真は以下の通りです。
2枚目の写真のように、赤い線と●を意識してトレーニングを行うと、より効果が発揮されますよ。
「前鋸筋〜脇腹」を意識したトレーニング
マシントレーニングであるロータリートーソの使い方でも述べましたが、肩甲骨を離すことで前鋸筋に刺激を入れることができます。
前鋸筋は脇腹にある「腹斜筋」とつながっているため、肩甲骨を離して捻る動作を入れることで、脇腹も鍛えることができるというわけです。
これらを踏まえたトレーニングメニューが以下です。
①片足を前に出し、後ろ足は伸ばす。その状態で肘をしっかり伸ばしてハーフポールを持つ。
②その状態で出した足側に体を捻る。
これが良いフォームであり、効果の出るトレーニング法です。
逆に、以下のようなフォームだと効き目が薄くなるので、注意しましょう。
キネティックチェーンを意識すべきポイント
これはトレーニングを行う際でのキネティックチェーンでしたが、日常生活でもキネティックチェーンを意識すべき瞬間がたくさんあります。
その中で最も大事なのが「歩行姿勢」です。
歩行姿勢は運動連鎖の連続なので、キネティックチェーンを意識して歩行できる人とそうでない人では、下半身への負担に雲泥の差が出てきます。
ですので、これから紹介するポイントを自分の歩行時の様子と照らし合わせてチェックしてみてください。
これはランジと呼ばれるトレーニングでの後ろ足の様子を写したものです。
「足関節」「膝関節」「股関節」の3つ全てが『伸展』しているのが分かると思います。
これをトリプルエクステンションと呼び、歩行の際には非常に大事なポイントとなるのです。
先ほどの写真とは反対に、「足関節」「膝関節」「股関節」の3つ全て『屈曲』しているのが分かりますよね。
この姿勢で歩いてしまうと、もも前への負担が多く下半身太りの原因になってしまいます。
しかし、この歩き方で歩いている人がほとんどなのが現状です。
ぜひこの機会に、自分の歩き方を見直してみましょう。
キレイな歩き方については、こちらのインスタ投稿で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
キネティックチェーンの種類
ここまでで読んでいただけたら、キネティックチェーンについてはある程度理解できたと思いますが、この章では2種類のキネティックチェーンについて解説していきます。
ただし、トレーニング上級者向けの内容になりますので、トレーニング初心者の方でも理解していただけように、難しくは述べません。
ですので、軽く目を通していただければと思います。
オープンキネティックチェーン
オープンキネティックチェーンの通念は以下の通りです。
少し難しいと思うので、どんなトレーニングが該当するのかをご紹介します。
オープンキネティックチェーンのトレーニング例
・ベンチプレス
・ショルダープレス
・レッグエクステンション
・レッグカール
マシントレーニングの多くはオープンキネティックチェーンで、くびれサーキットにあるマシンもこれに当てはまります。
オープンキネティックチェーンのメリット
オープンキネティックチェーンのメリットは以下の通りです。
- リハビリやトレーニングを集中的に行うのに適している
- 容易かつ安全にトレーニングが行える
オープンキネティックチェーンのデメリット
オープンキネティックチェーンのデメリットは以下の通りです。
- 身体機能の改善には直接的には結びつかない
- 特に下肢と体幹機能についてはその傾向が強い
- リハビリにはCKCエクササイズも取り入れたプログラムが必要
クローズドキネティックチェーン
クローズドキネティックチェーンの通念は以下の通りです。
クローズドキネティックチェーンに当てはまるトレーニング例は以下の通りです。
クローズドキネティックチェーンのトレーニング例
・懸垂
・スクワット
・ランジ
クローズドキネティックチェーンのメリット
クローズドキネティックチェーンのメリットは以下の通りです。
- 障害の回復を目的としたリハビリやトレーニングに適している
- 組織の治癒の促進や運動機能向上の両方に貢献する、最も効果的な方法である
- 一度に複数の関節や筋肉を働かせることができる
クローズドキネティックチェーンのデメリット
クローズドキネティックチェーンのデメリットは以下の通りです。
- 一度に複数の筋肉と関節の動きが組み合わさるため、体の動きが複雑化する
- トレーニング初心者には難しい
- 間違った評価や処方は、関節や筋肉の負担を増やすため、幅広い知識と技術を駆使する必要がある
アウターマッスルのトレーニングを行う前にインナーマッスルのトレーニングを行うことで効果が増すように、クローズドキネティックチェーンを行う前にオープンキネティックチェーンを行うことで効果が増します。
トレーニングを行う上では「順番」も重要ですので、この2つを取り入れる際には順番にも配慮してトレーニングメニューを組んでみてください。
キネティックチェーンまとめ
トレーニング中級者から上級者向けの言葉である「キネティックチェーン」でしたが、内容は理解していただけましたか?
マシントレーニングでもキネティックチェーンを意識するのとしないのでは、効果に雲泥の差が出てきます。
これは本記事で解説済みですが、人間の動作は筋肉の連動によるものですので、全身の筋肉をバランスよく、そして効率的に鍛える必要があります。
これからトレーニングを開始される方、またトレーニングを指導する方はこのキネティックチェーンを意識してみてください。
くびれサーキットトレーナー 上原