LESSON COLUMN

2020.11.21

筋トレをする上で必ず抑えておくべきタンパク質の摂取量

 

「筋トレを頑張っているのに、なかなか筋肉がつかない…」
「トレーニングにタンパク質が大事なのは知っているけど、どんなものを食べれば良いか分からない。」

 

ジムに勤めていると、こういったご相談をよく頂きます。
あなたも、似たような不安や悩みを抱いているのではないでしょうか?

 

そこで本記事では、『筋トレをする方が必ず抑えておくべきタンパク質の摂取量』について科学的根拠を踏まえながら解説していきます。
本記事を読み終わる頃には、あなたが何をどのくらい食べれば良いのかが理解できているはずです。

 

なぜ筋トレにタンパク質が必要なのか?

 

 

そもそも、なぜ筋トレにタンパク質が必要なのでしょうか?

この問いに簡潔に答えるなら、『筋肉を成長させるため』と答えます。

 

筋肉は使わないとどんどん劣化してしまい、風邪を引きやすくなったり、太りやすくなったりと、数多くのデメリットを生み出します。
健康的に生きていく上でも筋肉は欠かせないのです。

 

筋肉は破壊と再生を繰り返している

 

これは耳にしたことがあるかもしれませんが、筋肉は破壊と再生を繰り返しています。

 

例えば、あなたがレッグプレスを行ったとします。
すると、(主に)お尻の筋肉が破壊され、そこから時間を経て再生していきます。

 

この破壊と再生の間に筋肉に栄養を与えることで、より強い筋肉へと成長するという仕組みです。

 

筋肉を構成する主な栄養素はタンパク質

 

そんな筋肉の材料となるのが「タンパク質」です。

タンパク質の他にも、筋肉の動力になる糖質も大切ですが、ここではタンパク質に焦点を当てているため糖質についての説明は省きます。

つまり、「破壊された筋肉にタンパク質を与えることで筋肉が成長する」というわけですね。

 

1日に必要なタンパク質の摂取量

 

 

筋肉を成長させるためにはタンパク質の摂取が必要不可欠であることは理解できたと思うので、1日に必要なタンパク質の摂取量を場合分けしてご紹介します。

・あまり体を動かさない方
・運動をしていて健康的な体を作りたい方

主には、上記の2パターンに分かれます。

 

あまり体を動かさない方

 

2020年厚生労働省の発表⑴によると、普段からほとんど体を動かさない方は「体重×0.65g」が最低限のラインだとされています。

 

ただし、この数値は身体機能を動かしていく上での最低限のラインなので、『体重×0.8g』の摂取が推奨されています。
体重60kgの人の場合、48kgのタンパク質摂取が必須ということです。

 

また、40代を超えると加齢に伴い筋肉が減っていくため、歳を重ねるほどタンパク質が必要になります。
これを加味して、『体重×0.8~1.2g』を目安にするのが良いでしょう。

 

運動をしていて健康的な体を作りたい方

 

普段から運動をされている方や引き締まった体を作りたい方は、最低でも『体重×1.5g』のタンパク質摂取が必要と言われています。
体重60kgの人の場合、90gのタンパク質摂取が必須ということです。

 

また、最低限のラインと書きましたが、厚生労働省の発表によるとタンパク質の摂取量の上限は設けていません。
ただし、第3章でも書いているように、人によっては摂りすぎると害が生まれます。

 

これを踏まえて、『体重×1.5~2.0g』を目安にするのが良いでしょう。

 

タンパク質を摂取すべきタイミング

 

 

「筋トレ後の30分はゴールデンタイムだ!」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。
これは正しい情報ですが、筋肉を成長させるためには不十分です。

 

最も重要なのは「筋トレ後の24時間」

 

筋トレ後の30分よりも大切なのが「筋トレ後24時間の栄養素摂取」です。
ここでしっかりと栄養素を吸収しないことには、いくら筋トレ後にタンパク質を摂っても筋肉は成長してくれません。

 

テキサス大学のティプトン教授らが行った研究⑶で血流量やアミノ酸濃度などが長時間持続していたことから、トレーニング後24時間は筋タンパク質の合成感度が増加することが示唆されています。
さらに、マクマスター大学が行った研究⑷でも、高強度、低強度ともに疲労困憊まで行ったグループは、24時間後の筋タンパク質の合成作用の増加が示されていました。

 

まとめると、『トレーニング後の30~90分後にタンパク質の合成作用が最も高くなり、その効果は緩やかに減少していくが、24時間後までは持続する』ということです。

 

このことから、筋トレ後だけではなく、筋トレ後24時間以内のタンパク質摂取の大切さが理解できると思います。

 

1回に吸収されるタンパク質の摂取量

 

また、1回に摂取できるタンパク質の量は「20~25g」ということもよく耳にしますが、こちらも正確には誤りで、国際スポーツ栄養学会の研究⑸によると、運動の種類によりますが1回に40g摂取したほうが筋肉の合成量が20%高くなることが分かっています。

この研究では全身の筋力トレーニングで統計的に有意な差が出ていますが、部分的なトレーニング(レッグエクステンション)では統計的に有意な差は出ていませんでした。

このことからも、1食あたりのタンパク質摂取の条件を20gとストイックに考慮する必要はなさそうです。
ただし、理想は『20~25gのタンパク質摂取を等間隔で摂取すること』ですので、この事実は頭に入れておいてください。

 

タンパク質を摂りすぎると害があるのか?

 

さらに、「タンパク質を摂りすぎると体に害があるのでは?」と心配になっている方も多くいらっしゃいますが、これについても結論が出ています。

 

厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準 2020」ではタンパク質の摂取量上限を設けておらず、他の研究でも人体に影響が出るまでのタンパク質摂取は到底できないと言われています。
そのため、現時点ではタンパク質の摂取上限を気にする必要はありません。

 

ただし、以下のような症状が見られた場合はタンパク質の摂取量を見直したほうが良いでしょう。

①内臓疲労
②カロリーオーバー
③腸内環境の乱れ

それぞれの特徴について解説してきます。

 

①内臓疲労

 

先述したように、私たちが摂取したタンパク質は体内で合成と分解を繰り返します。
その過程において、食事から摂ったタンパク質のうち余ったものは分解され「窒素」となります。

 

この窒素を体外に排泄するためには、肝臓や腎臓の働きが必要で、体内の分解過程で必要なくなった窒素は「アンモニア」へと変わります。
アンモニアはご存知の通り有害な物質であるため、肝臓で無害な尿素に変換されたのちに尿として排出されます。

 

この時にタンパク質を過剰に摂取してしまうと、そのぶん多くの窒素を尿に変換しなければならなくなります。
そのため、肝臓や腎臓にかかる負担が普段よりも大きくなり、内臓疲労を引き起こしてしまう可能性があるというわけです。

 

②カロリーオーバー

 

タンパク質が豊富な食品は、比較的カロリーが高いです。
「タンパク質をもっと多く摂りたい」という思いから、肉や卵などをたくさん食べてしまうと、結果的にカロリーオーバーとなり肥満になることはあります。

 

高タンパク低カロリーの食事を意識することがとても大切で、オススメの食材に関しては第4章が参考になります。

 

また、高タンパク低カロリーの食品を選ぶだけはでなく、「調理する際に油を必要以上に使わない」といったことも大切なポイントです。

 

③腸内環境の乱れ

 

私たちの大腸には100種類以上、100兆個にも及ぶ腸内細菌が生息しており、これらは善玉と悪玉、どちらでもない中間の菌と大きく分けて三つのグループで構成されます。

一番多いのは中間の菌で、次が善玉菌。悪玉菌はわずかといわれています。

タンパク質は動物性と植物性に分かれますが、動物性タンパク質を摂りすぎると、体に吸収されなかったタンパク質がそのまま腸内に送り込まれます。
腸内に贈られたタンパク質は悪玉菌のエサになってしまうので、腸内環境の乱れが発生しやすくなります。

 

本来、一番少ないはずの悪玉菌が増えてしまうと腸の運動が弱まり、感染の危険性が高まる食中毒菌や病原菌、発がん性を持つ腐敗産物が多く作られてしまう可能性があります。

 

自分の腸内細菌が健康的な状態であるかどうかを知るには、便を観察するのが手っ取り早いです。

・黄色、もしくは黄色がかった褐色で、多少匂いがあるものの臭くはない→理想
・黒っぽい色で、嫌な匂いがある→腸内環境が悪い

このように判断ができますので、ご自身の便を見て腸内環境の良し悪しを理解してください。

 

筋トレ後にオススメのタンパク質が豊富な食材

 

 

筋トレ後にオススメのタンパク質食を紹介する前に、植物性タンパク質と動物性タンパク質について解説します。

 

この植物性と動物性の理想の比率は「1:1」が理想ですが、動物性タンパク質を最低でも半分以上にすることが好ましいと言われています。

理由としては、体内の吸収率も動物性タンパク質97%に対して、植物性タンパク質は84%とだからです。

また、動物性タンパク質は多くのものが9種類の必須アミノ酸を含んでいますが、一部の植物性タンパク質は不足しているものがあることから、動物性タンパク質のほうが重要度が高いとされています。

 

植物性タンパク質とは

 

植物由来のタンパク質のことを指します。
主に、米や小麦、大豆、種類によっては野菜や果物にも含まれています。

 

特徴としては、ダイエットの際に気になりがちな油脂をほとんど含んでいない点です。
このことから、低脂肪・低カロリーの食事を摂ろうとした際には『理想的なタンパク質』と言えます。

 

ただし、植物性タンパク質だけでは必須アミノ酸をすべて賄うことができないため、それだけで健康を維持することは不可能です。

 

動物性タンパク質とは

 

魚介類や肉類を含む動物由来のタンパク質のことを指します。
主に、肉類や魚介類、卵、乳製品などに含まれています。

 

特徴としては、「必須アミノ酸」を含んでいる点です。
アミノ酸はタンパク質を合成するのに必要ですが、アミノ酸自体は他の栄養素から自力で生成できるのに対し、必須アミノ酸と呼ばれる9種類だけは自分の力では作れません。
そんな時に動物性タンパク質を摂取することで、手軽に必須アミノ酸を摂取できます。

 

オススメのタンパク質食

 

では、高タンパクかつ低カロリーの食品をご紹介します。

・鶏胸肉(肉類)
・牛ヒレ肉(肉類)
・シカ肉(肉類)
・タイ(魚類)
・マグロ赤身(魚類)
・イカ(魚類)
・鶏卵(卵類)
・うずらの卵(卵類)
・牛乳(乳製品)
・ヨーグルト(乳製品)
・チーズ(乳製品)
・納豆(大豆)
・豆腐(大豆)
・枝豆(野菜)
・レンズ豆(野菜)
・ツナ缶(その他)
・ローストビーフ(その他)

肉や魚、乳製品などで分けているので、この中からバランス良く摂取してください。

 

まとめ:筋トレ後はタンパク質を意識した食事をする

 

 

最後にまとめです。

まとめ

・1日に必要なタンパク質は、基本的に『体重×1.5~2.0g』
・タンパク質の摂取は筋トレ後だけではなく、『筋トレ後の24時間』を意識する
・タンパク質の摂りすぎや1回の摂取量はそこまで気にしなくても良い
・動物性タンパク質と植物性タンパク質の摂取割合は基本的に「1:1」
・どちらかと言うと動物性を意識して摂取する

筋トレの効果を最大限発揮させるためには、タンパク質の摂取が必要不可欠です。
ぜひ本記事で学んだことを今後のトレーニング生活に活かしてください。

【参考文献】
⑴https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586557.pdf
⑵https://journals.lww.com/acsm-msse/Fulltext/2016/03000/Nutrition_and_Athletic_Performance.25.aspx
⑶https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajpendo.00234.2002?rfr_dat=cr_pub++0pubmed&url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org
⑷https://academic.oup.com/jn/article/141/4/568/4630587
⑸https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12970-018-0215-1

 

くびれサーキットトレーナー 上原道矢